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No think!

No think! ‐考えない‐ は銀座の箱屋、箱根ヶ崎がお届けする1記事5分くらいで気軽に読めるシンプルライフブログです

「宮崎駿の雑想ノート 感想」 兵器の矜持

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先日、東京都現代美術館に2回目の「ピクサー展」に行ってきまして。

次回は長崎で開催してその後は(もし開催されれば)35周年の展示会までお別れになります。

普段は表に出る事の無い、美麗なアートワークの数々は「仕事」と言う枠組みを超えて「現代美術」と言った感さえあります。

次回の開催地である長崎のお近くにお住まいの方は是非。

きっと素敵な時間を過ごせます。

 

そんな中で帰りに寄った現代美術館の売店で見つけた本が凄く刺さった。

 

宮崎駿の雑想ノート 

宮崎駿の雑想ノート

宮崎駿の雑想ノート

 

宮崎駿の雑想ノート』(みやざきはやおのざっそうノート)は、漫画家・アニメ監督の宮崎駿による、イラストエッセイ及びマンガである。後にラジオドラマ化もされている。

アニメ制作の合間に模型雑誌『月刊モデルグラフィックス』に不定期連載されたもので、作者の趣味である軍事関係の船舶、航空機、戦車等を題材にしている。全13話。 

宮崎駿の雑想ノート - Wikipedia

 

宮崎駿の描く精密だけど、どこか懐かしいイラスト満載の戦車や戦闘機・艦船の図録が「宮崎駿の雑想ノート」だ。

懐かしいも何も最初の図録の日付が1984年・・・

 

が、そこは世界の宮崎駿。そんじょそこらの写真集や図録とは一味も二味も違った仕上がりになっている。

 

途中までしか読んでないけど、勢いづくと最後まで読んでしまいそうなので寝る前に1話のテンポで読んでいる。

電子書籍は場所を取らなかったり手軽に読めるメリットがあるけど、こう言った「思わぬ所で思わぬ出会い」があるので紙の本は楽しい。

 

登場兵器がちょっとダメっぽい

まだ半分ほどしか読んでいないけど出てくる兵器は架空の物も含めてみんなちょっとダメっぽい。

ゼロ戦とか戦艦大和とかじゃなくて「定遠級戦艦」とか「ポテーズ540(ポテ540)」とか知らない兵器ばかりが出てくる。

知っている兵器の知らない話も興味があるけど、知らない兵器の知らない話とかもう好奇心しか湧かない。

 

そして前半に限って言えば出てくる兵器は皆優秀である事を期待されながらもどこかしらに欠点を抱えていたりする。

重装備すぎて「ほぼ」飛べない飛行機だったり、世界初の鋼鉄製戦艦同士の戦いはお互いの装甲を砲撃では貫けず、ボコボコになるまで打ちあって日没で痛み分けになったり。

 

「兵器」と言う固い言葉の中に、どこか牧歌的とも言える愛らしさを感じる事ができる。

考えてみれば優秀な兵器なら量産されて歴史に名を刻むわけで、ちょっとダメっぽいからこそ「時代の仇花」となった兵器なのかもしれない。 

 

兵器の図録だけど主役は人間

兵器の図録なので図録中、大きく扱われているのはもちろん兵器である。

だけど、それを取り巻く文章の多くはその兵器に携わる人達だ。

カタログスペックの紹介に終始せず開発経緯、それにまつわる人間模様、その後日談など話の核には人が据えられている。

 

先の「ポテーズ540」が登場する「農夫の眼」では農夫が敵の秘密飛行場を発見する所から話が始まる。

秘密裏に飛行場が建設されている事を軍隊に伝えるが、農夫は文盲で地図が読めない。

文盲の農夫の眼となって偵察と同時に飛行場の爆撃を行う為に登場する航空機がポテーズ540だ。

 

紹介文では「航空兵からの評判は悪かった」とか「登場した時点で既に旧式掛かっていた」とか散々言われている。 

その散々に言われているポテーズ540が文盲の農夫と共に飛び立ち、農夫が慣れない空から必死で探す姿や、飛行場の爆撃後に喜ぶ姿など生き生きと描かれている。

短いページながら読み終わると長編活劇を読み終わった様な爽快感を感じた。 

 

皮肉とも言える結末

先に紹介した2つが相まって、ラストは非常に考えさせられる結末になる話もある。

読んだ中では「リュースバルク市の高射砲塔」だ。

 

第二次大戦中、片田舎のリュースバルク市ではドイツ海軍のUボート用魚雷の生産を一手に担っていた。

その関係から劣勢になるにしたがってリュースバルク市が爆撃目標になる可能性が浮上してくる。

なんとしても魚雷製造工場の爆撃を阻止したいナチス・ドイツでは同市の周りをぐるりと高射砲塔で囲む案を採用した。

高射砲塔は実際第二次世界大戦で使用された対空陣地で鉄筋コンクリートで固められてた塔に無数の対空機銃、対空砲が設置されている。

 

しかし大量の資材を使って高射砲塔を作るより魚雷工場を移動させた方がいいんじゃね? とさながら「猫を追うより皿をひけ」的な、ある意味非常にもっともな意見でこの計画は「途中」で中止される。

すでに作りかけている塔はシンボル的な意味合いもあってそのまま建設が続けられめでたく完成する。

 

しばらくは平穏な時間が流れるが、やがて連合国の爆撃が始まる。

高射砲塔は当初の予定通り無数の対空火器による圧倒的な火力・数mの厚みがある鉄筋コンクリートの絶対的防御力、とさながらドラえもんの無敵砲台の様にこれをことごとく撃退する。

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しかし、今度はその無敵っぷりが仇となりUボートの魚雷工場より高射砲塔自体が爆撃の目標になってしまう。

高射砲塔は度重なる空襲を全て撃退するが、リュースバルク市は墜落した航空機や爆撃の流れ弾で人が住まない廃墟の街となってしまう。

守ろうとすればするほど、守るべきものが傷つくという一種皮肉ともいえる結末となる。

 

書かれた年代は30年以上前だが、宮崎駿独特の温かみのあるイラストと短いページに凝縮されたストーリーに魅せられる。

架空兵器も登場するが、それも「風の谷のナウシカ」や「天空の城 ラピュタ」に登場する様などことなくポンコツっぽい兵器だ。

図録でありながらストーリーも楽しめるのでとても新鮮に感じる。

まだ半分ほど残っているのでゆっくりと楽しみながら読んでいきたい。

 

それでは、また。

 

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